凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━




「ふふっ」


お馴染みの光景に思わず笑みが零れた。



「あっ朔が笑った!」

「えっ」


そんな私を目にした平助くんが何故か嬉しそうに目を細める。



「おっほんとだ。そうだよな、お前はまだ若い娘なんだし、そうやって笑ってんのが一番だぜ」

「こんな狭い部屋にいねぇで、ほんとは自由に外歩かせてやりてぇんだけど、な」

「左之さん、新八さん……」



困ったように笑う三人。

確かに自由になりたいと思う。この軟禁状態がいつまで続くのか、帰る方法はあるのか―――考え出したら色々キリがないことばかり。

でも今はこうやって私を気にかけてくれる人たちがいるから。その存在に心が救われているのは事実。




「有難うございます。でも大丈夫です、この部屋からは出られなくても、皆さんのお陰で私、本当に楽しいですから。逆に何もしないのにここに置いてもらって申し訳ないくらいです」


やさしい人たちへと嘘偽りなんてない微笑みを。

そう、これだけで十分だよ。




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