凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━






「―――あっそうだ!」


その時だった。何かを思いついたらしい平助くんが目をきらきら輝かせる。



「どうしたよ、一体」

「わかったんだよ!朔をこっから出してやれるかもしれねぇ方法が!」

「えっ本当なの?」

「本当か平助?!」


私以上に左之さんが身を乗り出して聞く。

期待を膨らませる私たちを見回して、平助くんは両手をパンと打ち鳴らした。



「掃除だよ、掃除!!」

「「「……掃除??」」」







「―――掃除だぁ?」


平助くんの言う方法がなんなのかよくわからないまま連れてこられたのは土方さんの部屋。



『朔に掃除をさせてあげて下さい!』


襖を開けるなり、そう口にした平助くんに土方さんは怪訝そうな面持ちになり、先程と同じ内容を繰り返す。


「掃除だぁ?なんだってんだ、いきなり」

「副長!お願いです、朔に屯所内の掃除をやらせてあげて下さい」

「だから、なんでんなこと急に言い出すのかって聞いてんだ」


土方さんは目をすがめた。

そんな仕草だけで怖いと感じてしまう私とは対照的に、平助くんは力強い瞳で理由を説明する。



< 130 / 134 >

この作品をシェア

pagetop