凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━
いまいち咀嚼できない状況。
混乱した頭を抱え、青年と異形を交互に見ていると
「っ」
突然異形は身を翻し、自分の左手にあった襖を素早い動作で押し倒すと、闇の中へと消えていってしまった。
「待てッ!!」
「いたか、総司?!」
一呼吸遅れ青年が足を踏み出そうとしたとき、また別の男性が現れた。
身に纏うは青年と同じ黒い衣服。仲間みたいだ。
「はい。でも逃げられちゃいました…あっちへ」
「チッ…なら早いとこ追うぞ!」
「あっすみません土方さん。私は、」
さっきまでとは別の瞳が私の姿を捕らえる。
「この子を………殺ってから追います」
愉しげに細められた双眸。
意味が理解できなかった。ううん、理解したくなかった。背筋に悪寒が走る。希望じゃなかったんだ、現れたのは―――またしても絶望。