凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━




「斬りたいんなら…さっさと斬ればいい、殺せばいい!!最初からそうしとけばよかったでしょ?!そしたらあなたたちだって……わざわざ私なんか助けに来なくて済んだんじゃない!あなたがあの夜、私を殺してれば……私だってこんな思いせずに済んだ…!!!!」



途中から、自分でも何を言ってるのかよくわからなくなってきた。思考が追いついていかないの。

自分を正当化するような、聞いている側にとっては不快でしかない滅茶苦茶な理由で彼を責め立てる。




「殺しなさいよ…!!私が邪魔な人がいるんでしょ、長州の間者だって疑ってるんでしょ?私の言うことなんかどうせ誰も信じてくれないんでしょ…?!」


頬を冷たい感覚が滑り落ちてゆく。彼の表情が霞む。



「……だったらっ、早く殺せばいいじゃない……私が死んでも、悲しんでくれる人なんかここにはいない……」


ううん、ここだけじゃなかった。


「未来にだって、いない。そんな人はどこにもいないの!!もう、生きてる意味なんかない……こんなの、死んだ方が楽よッ……!!!」



ありとあらゆる思いが滂沱たる涙となって溢れ出し、叫んだ。心の悲鳴を思いきり叫んだ。

刹那、私の前で空気が素早く動いた。





「あの時は、君の願いを叶え損ねたからね…」



―――カチャン。


私の喉元に、水平に宛がわれた白銀。



「そんなに死にたいんなら、いいよ?」



くっきりと、目の前が鮮明になる。



「僕が、殺してあげる」



殺気を孕ませた双眸に捕らえられ、身動き一つ取れなくなった。口許はやはり笑んでいるのに、彼の目は笑っていない。……本気だ。






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