真実の奥に。

「好きな人とか、いんの?」

そう聞いた彼はいつもの明るい雰囲気ではなかった

少しの緊張を感じた


「いない・・・けど?」

彼に釣られ、あたしもなんだか緊張してしまった


「そっか。」

そんなあたしをよそに、

彼はいつものトーンに戻り、踊り場を曲がって再び階段を昇り始めた





あたしは立ち止まっていたことを思い出し、

慌てて彼の後を追った


彼の丁度隣に来たところで、

「八木は?好きな人いるの?」



あたしだけ答えるなんて納得いかないわ!

そう思ったから聞いてみた


八木は、すぐには答えなかった

代わりに、彼はぐっとあたしに詰め寄り、



「いるよ。」

あたしを真っ直ぐ見つめ、

芯の通った声で彼は言った





――・・・その後ずっと心臓の音が耳まで響いて鳴り止まなかったのは、

その時距離が近かったかならのか、

八木の顔が整っていたからなのか、



それとも、何かが芽生えてしまったからなのかは


ハッキリいって自分でも分からない






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