エイレネ
その瞬間。
風がふき、狼の左目をかくしている前髪がふわりと動いた。

「え……」

「ん?」

「狼、右の目……」

狼はあぁと呟くと、体ごと私のほうへ向けた。
狼は左手で左目を抑えている。

「そういうの、なんていうんだっけ?オ……ん?ロだっけ?ロッ……ド?」

「オッドアイな」

「そうそう、それ!」

私は手をたたく。
それを見て狼は苦笑した。

「ロッドって……杖かよ」
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