リアル -夏-

7月-出会い-

朝からの嫌な胸騒ぎはこれだったのか…。
今まさに崖から飛び降りようとしている少女を前に
俺はひどく冷静にそんな事を思ってた。
見たからには止めなければ
『お嬢さーーーん』
俺の声に少女は振り向く。俺は思わず退いた。
怖いくらい彼女の瞳には感情の欠片もない。
その瞳に負けじと声を張り上げる。
『死ぬのは勝手ですけどここで死ぬのはマジ勘弁してください』
今から死のうとしている少女にそんな言葉をかけた俺は後悔し始めるのに
1秒もかからなかった。
しかしその声が彼女には届かなかったのだろうか。
彼女は碧い海を見つめていた。
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