空を見上げて
ここは…事実を話していいとこだよね?

話を作らなくてはいけないのはどこからなのか…

その見極めがうまくいかない私。

恐る恐る口を開く。


「うん…蒼に『蒼って呼べ』って言われたから…。」

「じゃぁ、相原くんは、最初から美月を気にしてたってこと?」


…気にしてたも何もないんだけど。


「ん?ノリで言っただけだけど…」


…そんな理由?

茜に便乗しただけって事?


「何?呼びたくないのに呼んでる感じ?」


納得のいかない顔をしていたのか、蒼は私の顔を覗きこむ。


「そうじゃないけど…。」


確かに、不思議だったんだ。

クラスメイトでも、他のクラスの友達にしても、『蒼』と呼ぶのは私くらい。

心くんや、健くんみたく、中学の友達は『蒼』って呼んでるみたいだけど…。


「それとも、『お前は特別だ』って言ってほしかったとか?」

「バ…っ!何言ってんの?!自意識過剰のナルシスト!!」


話を聞いていたクラスメイトは大爆笑。


「私、トイレ行ってくる」

「はぁ~い!」


真っ赤になった顔を隠しながら、みんなに見送られ、席を立った。

『お前は特別』…。

そうじゃない事くらいわかってる。

じゃぁなんでキスなんてしたの?

いや…おでこだけど…。

蒼は割り切って、あんな悪ノリまでできるのに、私は全然ダメだな…。


鏡に映る自分を見つめながら、自己嫌悪。

無意識のうちにため息が漏れる。


「ノリなら…私も『蒼』って呼んでみようかな」


鏡越しに私の後ろから入ってきた人影が見えた。


「秋野さん…」


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