空を見上げて
茜が無理矢理、話を終わらせたとほぼ同時に店員さんが茜のところに来て、会計をするように言っていた。

あ、もうそんな時間だったんだ。

茜はちゃっちゃと会費を回収し、支払いを済ませ、解散させる。


「相原くん!カラオケ!二次会行こうよっ!」


店からの移動中も相変わらずベタベタする二人。

秋野さん、カラオケ好きだな…。

ってか、今日はなんの集まりだったか覚えてますか~?

もぅいいや。

……帰ろう。


「あれ?美月、帰るの?」

「うん!今日は帰る!また月曜日!」


珍しく、引き留められることなく、茜と手を振り家路を急ぐ。

この間、この道で工藤と会ったんだった…。

思い出してしまったが最後、この道を歩くのが怖い。

でも…誰に頼ることもできないし。

走ってやるっ!


「美月!」


走り出そうと勢いをつけた途端に、後ろから声をかけられる。

あの時もそうだった…。

工藤に後ろから声をかけられて…。

どうしよう…。

足が…動かない。

怖い…。


膝がガクガクと震え、立っているのがやっと。


「みぃ~つきちゃんっ?何で先に帰るんだよ?」


後ろから顔をのぞかせたのは蒼だった。


「な…蒼?」


腰が抜けたようにその場に座り込む。

良かった…


「え…あ、悪い!驚かせたか?」

「…工藤かと…思っ…」


蒼も、あの時の事を思い出したようにハッとする。


「悪い…大丈夫か?」

「ごめん…平気…」


とは、言いながらも、立ち上がれない私。

全然説得力ないよね、私。
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