空を見上げて
「でも…それを伝えるためにわざわざ走ってきてくれたの?」

「うん。家、近いから。一人で待つの辛いだろ?」


家が近いと言っても、30分以上前に、私が早く来る事を予想してきてくれるなんて…。


「ありがとう…優しいね。」

「!?」


一瞬、蒼の目が大きく見開いた気がした。

そして、今まで目を見て話す人だと思っていた蒼は、視線を逸らしたまま話しだす。


「あんまりお詳しくない場所に一人でいるのって心細いから…。」

「確かにそうだけど…。」


さっきまで、ここであってるのかなって思ってたもんね。


「ありがとう。」

「いや…。」


蒼は、頬をかきながら、私に視線を戻した。

そして、気がつけば、顔を合わせて笑っていた。


私、蒼と…男の子と二人でも笑って話せるようになってたんだ…。

私にとっては大きな一歩。

でもそれは…蒼だから…なのかな…。


「携帯、よかったら教えてよ。ちょうど持ってるみたいだし?」

「え?」

「クラスのヤツら、駿河しか教えてないだろ」

「うん…聞いてたの?」


誰にも教える気なんてなかったんだけど…。

茜の強引さに押されて教えただけなんだけど…。

教えない訳にはいかなかったから。


「教えたくないの?」


携帯を両手でギュッと握って、俯く私に気付いた蒼が、ゆっくりと私の顔を覗きこむ。


「…ごめん。」


私は俯いたまま、蒼とは視線を合わせずに答えた。

『どうして?』って言われたら、なんて答えればいいんだろう…。
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