空を見上げて
「そっか。まぁ、女の子はそれくらい警戒心があったほうがいいのかもね!じゃぁさ、俺のだけ登録しておいて。何かあったら連絡くれよ。」


私の心配をよそに、蒼は意外とあっさりと引きさがってくれた。

そんなふうに言われたんじゃ、断ることもできず、蒼の電話帳を赤外線で送信してもらった。


「非通知でも、電話出るから大丈夫だよ。」

「うん…わかった。」


蒼は、事情は何も聞かなかった。

人を信じられないって、悲しいことだと思う。

でも…今の私には、これが自分を守る最大の手段だから。


「どうする?待ち合わせの時間まであと30分。多分駿河が来るまで1時間くらいあるけど。」


ニカっと悪戯っぽい笑顔で笑う蒼。


「茜が来るまで1時間って…。」


思わず笑う私を覗きこむ蒼の表情は優しかった。


「うん。笑った!」

「…」

「気にしなくていいからね!」


さっきの悪戯っ子のような笑顔ではなく、フワッと柔らかい笑顔を向けられる。

連絡先を教えるのを拒んだのは私の方なのに…。

そんな気遣いまで…。

ホントに優しい人なんだな…。


私たちは、蒼に薦められるがまま、駅前のカフェに入った。


「ここの、ケーキうまいよ。」

「そうなの?楽しみ。あ、でも、ケーキなんて食べたら、食事入るかな…。」

「別腹でしょ!」


ニカっと笑いながらメニューを開き、ケーキセットを薦める蒼。


「男の子で、こういう場所詳しい人も珍しいよね。」

「あぁ、駿河に連れられてたまに来るんだよ。『ここのケーキがどうしても食べたーい』って」

「そうなの?」


ホントに二人は仲がいいんだな。

中学が一緒だって話は聞いたことがあるけど…。


「ねぇ、前から聞きたかったんだけど…。」

「なに?」
< 15 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop