空を見上げて
坂下くんがいなくなった隙をみて、蒼が私の耳元でコソっと話す。

何を意図しているのかわからずに、私は小さく首を傾げる。


「大勢集まる場所って苦手なイメージだったから。」


そんな事にまで気づいてたの?

洞察力があるというか、気配りができる人というか…。

というより、人と接するのを避けたいだけなんだけど。


「あぁ…うん。そうなんだけど…。」


そう答えるしかないよね。

ここで、帰るって言ったって無理なんだし。


「でも、塾サボってまで来るなんて、坂下くんにはビックリだよ。」

「アイツはお祭り好きだからな。」


あっていた目を逸らし、前を向いた瞬間に、また…。

秋野さんが視界に入った。

今度は、蒼が隣にいるからなのか…。

私を鼻で笑うような見下した視線を送り、そのまま店へはいって行った。


ここ3日でもわかった…。

秋野さんのグループの誰か…多分、秋野さん本人が…。

蒼を好きだってこと。

だとしても、私にはどうにもできないことだけど…。





「美月?」

「え?あ、なに?」

「ボーっとしてる」

「ごめん!」


蒼に声をかけられて我に帰る。


「大丈夫か?顔色悪いぞ?」
 

私の前髪を持ち上げ、顔を覗きこむ蒼。

その蒼の手を無意識のうちに払いのける。


「あ…」


つい、条件反射で動いてしまった私の手。

どうしよう。

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