空を見上げて
今回のように、1次会だけで解散するケースはなかなかないらしい。

茜が私に気を使って、解散させたように見せかけて、最初から召集するつもりだったんだ。


「わかった。行くよ」

「お、いいね!んじゃ、駿河待ってるから急ごう?」

「うん」


私は蒼の後ろをパタパタとついて歩く。

時々振り返る蒼。

まだ、別の班がいたら困るということで、さっき通った道ではなく、違う道で目的地へ向かった。

確かに、蒼だったらみんなに声をかけられるだろうから…。

私は納得して蒼のあとを追った。


「美月…」

「ん?」


突然立ち止った蒼。


「どうしたの?迷子にでもなった?」


冗談半分で、蒼の顔を覗きこんだ。


「いや…お前が迷子になりそうで怖いから、横歩いてくんない?」

「なにそれ!失礼なんだけど!」

「視界に入ってないと不安だから、ここにいて!」


蒼は、自分の横を指さして、私の定位置を指定する。


「ひどいー」

「お前がしっかりしてないから悪い!」

「はぁ?前の学校では、しっかり者で通ってたんですけど!」

「よっぽど、頼りない奴らばっかりだったんだな!」

「…もう、怒った!帰る!」

「嘘うそ、冗談だって!美月ー?」


180度回転して歩き始める私に駆け寄り、ご機嫌をとる蒼。


「茜に怒られればいいんだ!」

「それ、マジで怖いから勘弁して!」


本気で言う蒼に、思わず笑ってしまった。


「行こう?ダメ?」


首をかしげる蒼がなんだか可愛くて、『わかったよー』と言ってしまっていた。


< 37 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop