空を見上げて
「お父さん!ちゃんと送って帰れよ!」

「お父さんじゃねぇし!」


さっきの話以降、蒼は私のお父さんで定着していた。

私を見る目が、娘を心配するお父さんのよう…。

そう、健くんが言ったのがきっかけだった。


「蒼、大丈夫!一人で帰れるよ。」

「何言ってんだよ、フラフラだろ…」


いい具合に酔っぱらってる。

千鳥足って、こういうことを言うのね…。

でも、ちゃんと記憶はある!

ちょっと嬉しく思いながら、フラフラと歩く私。

蒼は『支えるから…』と断ってから私に触れる。

触れられるのに抵抗があること、酔ってても忘れないでいてくれてるんだ。

肩を抱かれたような体勢で、家路へ。


「蒼、寒くない?」


パーカー奪っちゃったから。


「お前、暖かいから大丈夫!子供体温?」


蒼は、ニコッと嫌味なく笑い、私の体を少し引き寄せる。


「ひどっ!また子供扱いした!」

「仕方ないだろ?」


そう言って笑う蒼の笑顔を見て、ドキンと心拍数が上がったように感じた。

いつものビクつく感じではないのは何故だろう。

お酒のせい?


「怖くない?」

「……」


少し怖いけど…一人でまっすぐ歩ける自信もないし…

でも、ちょっと怖いよなぁ。

そんな事を考えていた時。


「美月?」

「ほぇ?」


突然、呼ばれてゆっくり振り返る。


「………工藤」


一気に血の気が引くのがわかった。

なんでこんなところで会っちゃうんだろう。

膝がガクガクと震え出す。
< 89 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop