空を見上げて
「嫌がってるんで、離してもらえますか?」


そんな私に気づいたのか、蒼は私の体を引き寄せ、工藤に離すよう促す。


「邪魔すんじゃねぇよ!」


殴りかかろうとする工藤。


「ちょ…やめ…!」


工藤は、蒼に殴りかかる。

蒼の左手は、いつの間にか私の肩から離れていた。


「本気にさせたらマズいよ?」


蒼は、工藤の拳を避けていて、逆に工藤を脅していた。

何が起きてるの?

工藤は、学校でもケンカが強くて、近寄りがたい雰囲気で…。

誰も逆らったりなんてしなかった。


「美月、後ろ向いてろ。」

「蒼…やめて…工藤も…」

「大丈夫!後ろ向け!」


言われた通りに後ろを向いて…耳をふさいで目を閉じた。


体の震えも止まらない。


なんでこんなことに…


蒼を巻き込んで…


涙こみ上げてきた。




少しして、肩を軽く叩かれた。

体がまたビクッと反応した。

この手は…どっちの手?

蒼?

それとも…


体は完璧に固まっていてた。


「美月、行くよ」


顔を覗かせたのは…

蒼だった。

後ろを振り返ると、工藤がお腹を抱えてしゃがみ込んでいた。


「…う……美月…またな」


工藤は不気味な笑みを浮かべていた。

ゾワっと、虫酸が走る。


「『また』はねぇよ」


蒼は工藤を見下すような視線を送り、捨て台詞を吐いて私の手を引く。

無言で歩き出す、蒼の後ろ姿を見ていた。
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