空を見上げて
「ふふ…やっぱり、お父さんみたい…」

「うわ!何それっ!傷つきましたけど!」


少し、私との距離をとり、顔を覗く蒼。


「やっと笑った。」


蒼は優しく笑いかける。


「落ち着いた?」

「…うん。ありがと。」


優しく涙を拭う蒼。


「んじゃ、帰ろうか!」


蒼は、私の手をとり、駅に向かって再び歩き出す。

金曜日の夜の街中…。

人の往来の中、きっと視線だって痛かっただろう。

それでも、ずっと抱きしめてくれてたんだ…。

ありがとう。

蒼は優しいね。

巻き込んでしまったにも関わらず、原因も聞かないでいてくれた。

…言わないとフェアじゃないのかな。

蒼の背中を眺めながら…何が正しいのかわからなくなりそうだった。


「じゃ、俺帰るから、ちゃんと寝ろよ!」

「あ…うん……」

「そんな顔すんなよ…」


自分が、どんな顔をしていたのかはわからない。

でも…一人になることが、ものすごい不安で…。

思っていた事が伝わってしまったんだと、私は俯いた。

こんなの、ただ心配掛けるだけ。

事情を話す勇気もないくせに、甘えるだけはできるなんて都合よすぎだ。


俯いたままの私の頭をクシャっとなでる。


「お邪魔してもいいの?」

「え?」

「美月が俺でいいなら、落ち着くまでそばにいるけど?」


どうしても、一人でいたくなかった。

あの時の記憶が戻ってきそうで…。


気がつくと、黙ったまま頷いていた。
< 93 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop