花とアイドル☆《完》
ただ、前に窓ガラスの掃除を
手伝った時に、それぞれの部屋の
位置を教えてもらったことがある
だけだった。


――拓斗クンの部屋は、左の一番
手前だったよね……。


そのドアが視界に入ると、隙間
から明かりが漏れているのに気付
いた。

拓斗は、照明を点けたままで
休んでいるようだ。


部屋の前に立った花乃は、気合い
を入れてドアをノックする。


「…………」


しばらく待ってみたけれど、
なんの応答もないので、もう一度
ノックした。


けれどやっぱり、ドアの向こうは
シーンと静まり返っている。


「や、やっぱりこの程度じゃ
起きるわけないかぁ」
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