花とアイドル☆《完》
「何? 

花乃さんがどーかした?」


食べ終えた弁当の容器を片付け
ながら聞いてくる拓斗。

奏は、少しの間をおいてから、
いつもどおりの低い声で告げた。


「今朝は、重要なシーンの撮影前
だったので、言うのを控えていた
が……。

ああいう行為は、感心しない」


「――は?

ああいう行為って?」


「庭先で大声を出していたろう。

しかも呼びかける相手は若い女性
だ。

近所一帯の住人には本郷さんから
声をかけてもらっているが、
住人じゃない人間が前を通ること
もある。

誰かに見られたらどうする」


『声をかけてもらっている』

――つまり、『何か』見ても、
見なかったことにしてもらったり
、万一マスコミなんかが取材に
来ても、決して協力しないように
と、あらかじめ頼んであるのだ。
< 198 / 474 >

この作品をシェア

pagetop