花とアイドル☆《完》
「そうだね」


答えながら、花乃はふと違和感を
感じていた。


拓斗の表情が、言葉とは裏腹に、
どこか陰りを帯びたような気が
したからだ。


――気のせいかな?


はじめは、そう考えた花乃だった
けれど。


「だからさ、オレ自身は突っ走り
過ぎでもいーくらい、必死ん
なって仕事やってきたいと思って
るんだよね。

知名度ももっと上がってほしいし
、ファンももっと増えてほしいと
思ってるし」


言葉を紡ぐにつれ、徐々に拓斗の
表情に、陰りが大きく現れてくる。


やがて、拓斗はその足を止めて、
悲しげにすら聞こえる声で、短く
言った。


「オレは、このスタンスを変え
たくない。

でもそのせいで――オレの周りが
変わってかなきゃいけないのは、
しょーじき、ツラい」
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