花とアイドル☆《完》
その立て看板の後ろからヒョイと
人影が踊り出てきて、花乃は
驚いて立ち止まった。


「あ、名前は呼ばないでよ!」


小声で鋭く指摘されて、かろう
じて出しそうになっていた声を
飲み込む。


それを見て、『ウンウン♪』と
満足そうに歩み寄る彼が充分
近づいてから、花乃はようやく
小声で文句を言った。


「もぉー、びっくりしたよ!

拓斗クン、どーしてここにいる
の?」


「ん。花乃さんがこっちに向かう
の見えたから。

きっとここだろうなーと思って、
先回りしてた♪」


サングラスを少し動かして、
ウインクしながら拓斗はイタズラ
っぽく笑う。


「先回りって――。

っていうか、遥クンは?」
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