花とアイドル☆《完》
遥は強張った顔付きでそう謝る。


拓斗は少々イラ立ちをあらわに
し過ぎたと思い、少し声のトーン
を落として、


「あ、イヤ――
こっちこそゴメン。

花乃さん探してくれてたのに
……」


「う、ううん。いいけど」


「じゃあ、こっちにも花乃さんは
いなかったのか……」


遥が走ってきた方角を仰ぎ見て、
拓斗は困惑の声をもらした。


この道の先にいないとなると、
もう他にパッと思いつく心当たり
がない。


「くそっ、
どこ行っちゃったんだよ……!!」


行き場のない感情を込めて、
拓斗はかがんだ体勢のまま、
自分の膝を拳で強く叩く。


「拓斗……汗びっしょりだ。

ずっと走り回ってたのか……?」


「え? ああ――」


遥の声が少し震えているように
聞こえて、拓斗は短く答えながら
体を起こした。
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