花とアイドル☆《完》
花乃はもう、完全に体の力を
抜いて、その暖かい拓斗の腕に
全身をゆだねていた。


でも、それは。


さっきまでの脱力感とはぜんぜん
違う、とても幸せな感覚。


花乃は、心の底から自分が安心
しているのを感じていた。


「ダメじゃん……勝手にいなく
なったりしちゃ」


「ご、ごめんなさい……」


「ホント、困る。

頼むから、黙ってオレから離れて
ったりしないで――」


拓斗の声は、自分をしかっている
はずなのに、なぜだかとても
切なそうで。


花乃も、瞳を閉じたまま、何度も
『ゴメンね』と謝った。


――心配かけてゴメンね。

でも、来てくれて……ありがとう。


ずっと、こうしていたい――
そんなふうに、願ってしまった
けれど。
< 405 / 474 >

この作品をシェア

pagetop