好きなの。【短】
――帰り道。
「……〜でさ、「「れおくーん!!♪」」
玲雄の声と重なって聞こえてきたのは
可愛らしい女の子の声。
……あ、あの子。
…誰だっけな。
学校で見かけたことあった気が…、
「…あ、かなちゃん」
玲雄はその女の子に優しく笑って返す。
……"かなちゃん"でしたか。
なにかあるの?
なんで名前で呼ぶの?
―――――
「玲雄くんはどこ行きたいー?♪」
寄ってきてからというもの。
あくまで自然に
私と玲雄の間に入り、
腕を絡めて上目遣いで。
玲雄に話しかけるかなちゃん。
ふわっとした見た目は
かわいらしい印象なのに…
意外と積極的だ。
「…………」
会話を聞いていると、
どーやら今週の土曜日
2人で出かけるらしい。
……私とは滅多にしないデート。
2人きりで?
どこいくの?
言葉になってしまうギリギリで止めて。
浮かび上がればすぐ、封じ込める。
そんなことさえ慣れた。
"いつものことだ"。
胸が苦しいのは気のせい。
この苛立ちは、お腹が空いているせいなんだ。