卒業〜君のとなり〜
鼻の奥がつんとしてくる。
「次は、卒業生による卒業の歌」
合唱だ。
「指揮、鶴田弘樹」
「はい」
鶴田のいい返事が響き渡る。
鶴田の方を見たら、胸を張って真っ直ぐ前を見ていた。
心なしか、その瞳は凛々しかった。
鶴田が前の台に立ち、右手をあげると、みんな肩幅まで足を広げる。
ピアノの前奏。
もうそれだけで場内が切なさに包まれる。
やさしいメロディー。
いっぱい練習したよね。
何度も音をとって、調整して。
ハモった時、すごく嬉しかった。
色んな歌を歌った。
合唱はみんなの心をつないだよね。
みんな泣きすぎてもうぐしゃぐしゃだ。
みんなが心を込めて歌い出した瞬間、鶴田の顔が歪んだ。
くしゃくしゃのその顔を見た時、私も一気にあふれ出した。