双子
3
何処かで確かにあったこと。
朧気だが、覚えている。
「ねえねえ、こっちきて!」
「うん、いいよちょっとまってね」
「まって、あたしもいく」
ぎゅっと小さな手で掴んだ服は、第三者によって弾かれた。
ひりひりした痛みが、赤くなった手に伝わった。
「あんたはあたしよりしたなんだから、ついてこないでよ」
突き刺さった、一言。
その言葉を吐き捨てた人物は、何事も無かったように、あの子を連れて行った。
「ちょっと、それ、いいすぎだよ」
あの子が庇ってくれた。
嬉しかった。
「いいんだよ。あたしよりかわいくないし、すかれてもないんだから」
そこから先は聞き取れなかった。
あいつがあの子を連れて行ったから。
なんで、なんで、なんで。
なんであいつは、いつも、
ずるい、ずるいよ。
しんじゃえばいいのに。