双子



渉君と愛が喋っていた。

全身の血液が、逆流する感覚がした。

ありえないありえない、
きっと愛が誰にも相手をされないのを渉君が可哀想だと思ったんだ。

渉君はやさしいから、きっとそうだ。


大丈夫、あたしの方が愛より可愛い。




担任が入ってくると、自然と皆は席へ戻った。

「伊吹茜とその妹ー居るかー」


「ちょっと先生、愛も名前で呼んでください」

こうやって言っておけば、皆は冴えない妹を気遣うあたしが優しいって思い込む。


本当、単純な生き物だ。

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