記憶の方程式(2011年10月15日更新)
「泣くなよ、知奈。俺はもうどこにも行かないから」
「悲しいんじゃなくてっ……嬉し泣きなのっ!!」
「ほら、泣き止めって」
怜人は私の涙を服の袖口で拭きながら話始めた。
「この、病院。後継者は優人だ。俺もその方が優人のためにも、病院のためにもいいと思ってる」
怜人は先ほど自分が出てきた病院を見つめていた。
その視線をゆっくり私の方に向ける。
「親父との仲はまだ険悪だし、病院なんてどうでもいいと思ってた。だけど、知奈
知奈が欲しい。ずっとそばで笑っていてほしい」
怜人は鞄の中から一枚の紙を取り出した。
「っ!!怜人……これっ……」
その紙には[婚姻届け]と書いてあり、怜人が書くべき箇所は全て埋まっていた。
「親父に『医者になる』って宣言してきた。優人にも」
そのとき、優人くんが最後に言っていた「兄さんの意見を尊重する」という意味を理解した。
「医者って本当は人の命を助けたいとか、そういう理由でなるものだって分かってる。だけど俺は知奈と結婚して、幸せな家庭を築きたい。何年先になるか分からないけど、俺が一人前の医者になったら、俺と結婚してください」
「悲しいんじゃなくてっ……嬉し泣きなのっ!!」
「ほら、泣き止めって」
怜人は私の涙を服の袖口で拭きながら話始めた。
「この、病院。後継者は優人だ。俺もその方が優人のためにも、病院のためにもいいと思ってる」
怜人は先ほど自分が出てきた病院を見つめていた。
その視線をゆっくり私の方に向ける。
「親父との仲はまだ険悪だし、病院なんてどうでもいいと思ってた。だけど、知奈
知奈が欲しい。ずっとそばで笑っていてほしい」
怜人は鞄の中から一枚の紙を取り出した。
「っ!!怜人……これっ……」
その紙には[婚姻届け]と書いてあり、怜人が書くべき箇所は全て埋まっていた。
「親父に『医者になる』って宣言してきた。優人にも」
そのとき、優人くんが最後に言っていた「兄さんの意見を尊重する」という意味を理解した。
「医者って本当は人の命を助けたいとか、そういう理由でなるものだって分かってる。だけど俺は知奈と結婚して、幸せな家庭を築きたい。何年先になるか分からないけど、俺が一人前の医者になったら、俺と結婚してください」