【短】─サクラサク─
 俺はそれでも信じられなくて、枝を掴みながら立ち上がった。


「おい、サク!!隠れてんなよ!」

 声を振り絞って叫んでみたけど、応答はない。

辺りを見渡しても、あのうざったくなるような光は欠片も見当たらない。


「……サク…」


 いきなりひょっこり現れて、言いたい放題で。

そのくせ寂しがり屋で……。


 どうして。

どうして……?



「ちきしょ…ぅ」

 目がこんなに熱いのはなんでだ?



 何事も無関心で、失敗ばかり恐れる臆病者の俺。

たった数時間でなにがわかるっていうんだ。



 頬を濡らした筋が、やけに熱かった。

握ったこぶしの爪が手のひらに食い込んで、赤くなってしまっていた。



「…サク…、戻ってこいよ……」


 あんな寂しい思いをしたままじゃ、辛すぎる。


 声にならない声で、俺は小さな小さな妖精の名前を呼んだ。


 心、って難しいもんだ。
だけど、考えるより簡単なもん。


それが人だろうが、花だろうが……。



 そこに『想い』がある限り。


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