【短】─サクラサク─
 俺をマジマジと見つめるさくら。


「なにが?」

「なんか、たのしそうだからさ〜」

 そういってさくらも微笑んだ。


 おいおい、俺のじーちゃんの葬儀の日だぜ?
そんなことあるわけないじゃないか。



 …──でも。

笑ってバイバイっていうのも、いいかもしんない。


 そう思った矢先だ。



「……そっか…」


 俺は納得した。

小さな俺の声にさくらはまたキョトンとしていたけれど。


 サクも同じだったのかもしれない。


振り返って、さっきまで上っていた桜の木を見上げる。

すると、一枚だけ桃色の花びらが俺の手のひらに舞い降りた。



「…サク……」

 微かに感じる温度。

そのこそばゆさに頬が緩んだ。


「どうしたの、ヒロ。やっぱおかしいよ」

 手を握り締めた俺を怪訝そうにみつめてくるさくら。

そんな彼女の髪を優しく包むように頭を引き寄せた。

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