Caramel*Morning




そのある人っていうのは、小柄な可愛らしいおばあさんでね。


私はいつも通り、横断歩道の前で信号が青になるのを待ってたんだ。


そのおばあさんは、カフェの前でキョロキョロしてて、明らかに迷ってる感じだった。


だけど、みんな朝だから忙しいのか、おばあさんを無視して歩いてく。



おばあさんは、ずっと誰かに声をかけようとしてて、

でもみんなさっさと歩いていっちゃうから、そのたびに困った顔をしてた。


私はちょっと遠くからその様子を眺めて、

可哀想だなぁって、早く青になれば私が助けるのにって、もどかしい気持ちでいっぱいだった。


そしたらーー


『どうかしましたか?』

多分、そんな感じのことを言ったんだと思う。



一人の男の子がおばあさんに近づいて、腰を屈めて笑いかけたの。


おばあさんはほっとしたような顔で、身振り手振りをつけて話をしてた。

男の子は話を聞いたあと、指をさして道の説明をしたんだ。


ーー優しい人なんだなぁ。
そう思った。



信号がやっと青になって、横断歩道を渡ったときには、男の子はテラス席で本を読んでた。



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