はじまりの唄
「裕子・・・」
「やだなあ、あたし・・・翔がデビューできるなんて、こんな嬉しいことないはずなのに」
ポロッ・・・
裕子の目から涙が落ちた。
「翔が・・・急に遠くに行っちゃったみたい。」
涙をこらえようとして必死な裕子を愛里はそっと抱きしめた。
「翔さんは遠くに行ったりしないよ。裕子のこと忘れるわけがないじゃん。・・・裕子。あんたやっぱり翔さんのこと好きなんだね。」
翔とは小さい頃からずっと一緒にいて、なんでも話せてこれからずっと笑い合っていられるはずだった。
「今は・・・応援してあげるべきなんじゃない?ファン第1号なんでしょ?」
ドキッ。
そうだ。
あたしはモッシュピットのファン第1号なんだ。
こんなんじゃファン失格だ−−・・・
今は
翔を心から応援するしかないんだ。
「そうだね愛里。」
「そうだよ!さっ。帰ろっか」
「うん!」
時は止まることなく進んでる。
幼かったあの頃はもうとっくの昔。
過去に留まってちゃ前へは進めない。
今をこの時を
流されることなく
進んで行かなくちゃ。