【完】君色フォトグラフ
「ごっ」


「はい、ではこちらへどうぞ」


私は女の店員さんに話しかけられ、茶髪男に言うことができなかった。



『ごめんなさい』って・・・・・・。




自分の感情を、何も分からない人にぶつけてしまったこと。

それが申し訳なかった。


もし自分が自分の覚えがないことで相手に怒りをぶつけられたら、今の茶髪男のように受け止めることができただろうか?

きっと相手に怒りをぶつけ返してしまうのではないか。





私が思うより茶髪男は・・・・・・


「いい人なのかもしれない・・・・・・」


「何か言ったか?」


茶髪男が自転車を駐輪場に置きながら、私に尋ねる。


「い、いえ、なんでも・・・・・・」


私は買ってもらったばかりの眼鏡をクイっとかけ直した。


「ふうん」


茶髪男は自転車を停めると私に歩み寄ってきた。

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