婚約者☆未満

黙ってあたしの手を見た伊織は不審そうな表情であたしの顔を見た。


手を見せた意味がわからないんだろう。


「爪、見てよ」


あたしが言うと、伊織はまたあたしの手に視線を向けた。


「せっかく完璧に仕上げたネイルがひどいことになっちゃったのは今日の倉庫整理のせいよ」


「……俺はマニキュアは持ってないぞ」


「あんたにマニキュア貸して、なんて言ってない!」


とぼけたことを言う伊織にムカッとした。


「ネイルはどうでもいいの。
あたしは、ちゃんと仕事してるって言いたいの!
言っちゃ悪いけど、智代っちよりあたしの方がずっと仕事早いんだから!」


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