婚約者☆未満

「今夜は、なに食べたい?」


「なんでもいい」


あたしはまともに伊織の顔を見られず、窓の外を向いたまま答えた。


「なんでもいい、が一番困る。
言わないと、おまえの嫌いな中華に連れてくぞ」


伊織がおどすので、あたしはしぶしぶ答えた。


「じゃあ、どこでもいいからファミレス」


ファミレスならほどほどに賑やかで、会話がなくても気詰まりにならないだろう。


そう思ってのことだった。



しかし――


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