婚約者☆未満

「何してる?」


「ひゃあっ!」



背後から急に声をかけられて、あたしは飛び上がった。


振り返ると、和室の畳の上に伊織は寝転んでいた。



「びっくりしたぁ」


驚きで鼓動の速くなった胸に手を当ててそう言うと、伊織は眉を寄せた。


「泥棒の真似事か?」


抜き足差し足で歩いてたんだから、そう言われても仕方ない。


「いや、あの、えっと……」


覚悟を決めてきたのに、驚かされた拍子に言うべきセリフが飛んでしまった。


< 230 / 270 >

この作品をシェア

pagetop