婚約者☆未満
あたしは一人になった車内でこっそり大きく息を吐いた。
あー、ビックリした。
でも、すぐにどうってことないって顔を作って車を降りた。
あたしが降りると倉本さんは車にロックをかけ、あたしと目が合うと、ふと微笑んだ。
あたしも負けじとニッコリ微笑み返した。
キスなんて、挨拶代わりよ。
全然たいしたことない。
そういう顔で。
そして、支店の裏口に向かう倉本さんのあとに続いた。
あー、まったく、なんだかもう!
あたしは恐慌を起こしかけてる心臓と頭を抱えながら、それでも遊び人礼奈の顔を作り続けた。