婚約者☆未満

「うそ!あたし、貝塚さんが支店長って聞いてたんだけど?」


あたしが責めるように言うと、貝塚さんは申し訳なさそうな表情になった。


「ええ、去年まではそうでした。
ただ、この4月から、私は副支店長になりまして……」


貝塚さんがそこまで言ったとき、倉本さんが判を押した書類を差し出してきた。


「OKです。
よろしくお願いします」


「あ、ありがとうございます。
では、お嬢様、私はちょっと急ぎでこの書類を先方に届けに行かなければなりませんので、これで」


貝塚さんがあたふたと支店長室を出てドアを閉めると、部屋には私と倉本さんだけが残された。


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