婚約者☆未満

あたしは倉本さんを見上げた。


「千円でいいよ」


電車なら片道千円もかからない。


あたしがそう言うと、倉本さんは財布をしまいながら言った。


「こまかいのはないんだ」


「じゃあ、今度ちゃんと返すから」


そう言って手を出すと、倉本さんは1万円札を持った右手をスッと上にあげた。


えっ?


あたしが出した右手は宙に浮いた。


と、次の瞬間――


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