14怪談
「じゃあ・・・じゃあ・・・・」

頭の中で、僕は何とか彼女と一緒にいれる方法を考える。



しかし何も思い付くことなく、次の言葉を紡ぐことは叶わなかった。


その時、僕は彼女の異変に気付いた。



彼女の顔が緩んでいるのだ。


さっきまで自分の人生を振り返り、僕の目も憚らず、泣き叫んでいた彼女が。

ジッパーのように裂けた直子の唇の口角があがっているのだ。



決して綺麗だとは言えないが、彼女の・・・今の精一杯の笑み。


直子は僕に言った。
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