14怪談
「えへへ・・公平さん。私はですねぇ、生きている時によく妄想してたんですよ。
私の家は厳正なキリスト教徒でしたので、仮に好きな人が出来ても、婚約をしなければ交際してはいけませんでした。
だからいっぱい妄想しました。
将来私と付き合う人はどんな人だろう。
デートはどこに行こう。
ウエディングドレスは何色が似合うかな。
そんな事をいっぱい考えては一人喜んでいました。
結局何一つ叶うことなく死んでしまいましたが、今、一つだけ夢が叶いました」



直子は恥ずかしそうに、痛んで艶のない黒髪をポリポリと掻いた。
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