にーにといっしょ
「もぅでるよっ…!」


・・・・・・。


役立たずな種を私の腹に放って
目の前の他人は果てていく。
一時間前に出会った恋人は
一時間後には見知らぬ人へ戻り
沈黙を守ることで、それが保たれるのだから
煩わしいのはほんの少しの時間でしょ。


「ありがとう楽しかったよ。それじゃぁね。」

「ちょっとおじさん、お金は。」

「………ぁぁそうだったね、ごめん。今持ち合わせないんだ。またじゃだめかな。」



「またなんてないよ。持ってるんでしょ。3.5って約束したじゃん。」

また、なんて有り得ないこと。
そんなのお互いわかってる。
逃げようなんて許されないんだよ馬鹿親父が。

「はい三万。」

「三万五千円。」


「クソガキが。ほらさっさと消えてくれ…見られたらお終いだ。」


そう囁いて足早に去っていく。
その愛し合った見知らぬ他人の背中に

死んじゃえ、って呟いた。
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