Honesty
バレーボールの特待生として、長崎の女子校に入学してからずっと寮生活をやってきた。
お休みもなく365日の2年間と、この夏のインターハイが終わるまで…
あとは国体の出場で終了。
「こんな小さい体で良く頑張って続けたな~」とほろ酔い気分になった父さんが呟き出す。
大学で県外に出ている優兄ちゃん、私と同じくスポーツ特待生で寮生活の弟の透、山本家は5人家族。
2人の男兄弟が居ない3人の夕食の時に珍しく父さんが話し出した。
「もう3年生だし、進路の事もあるよ!莉華」と母さんもポツリ。
「そうだね…バレーばっかりやってきたから取り柄も無いし、大学行って教師にでもなるか~」何も考えていなかった私はその場しのぎの言葉を出した。
「全日本ジュニアの合宿の時に、実業団の話しも戴いているからね!」若い頃に同じくバレーをやっていた母さんが自分の叶えられなかった夢を何気なく勧める。
「まあ、これから家に戻ったんだから幾らでも話し合って行きゃいいさ!」と父さんが母さんの押し付けモードの修正に入った。
「明日からまた練習が始まるからもう2階に行くね!バス通学初めてだから緊張するし…」とその場から速攻退散した。
部屋に戻って窓ガラスを開け、ベッドに横たわりボールで1人パスの練習をした。
「ヤバイ、身体が鈍ってるよぉ~」と思わず独り言。その時に車の音がした。
多分、私の子馬作戦のターゲット和兄ちゃんのご帰宅だ!
ベランダから庭を覗き市之瀬家の庭を見下ろすとビンゴ!
「お帰りなさ~い」和兄ちゃんに向かって叫んでみた。
「おう」の単語だけの返事。
あれれ?いつもの和兄ちゃんではない…
暗い?機嫌悪い?何だ?久しぶりに会ったのに?
何だかとても淋しいぞ~!
とてもおねだりできるような雰囲気ではないよね…仕事で疲れちゃったかな?
8才も年上の和兄ちゃんは高校3年生の私には物凄く大人の男性だ…
優兄ちゃんと文ちゃんは4才年上だけれど…そんなに感じないもんな、特に文ちゃんは私の喧嘩相手だしね!
喧嘩と言っても、文ちゃんが私の事をおちょくって私がむきになって突っ掛かって行くだけだけど。
とにかく今日は和彦兄ちゃんにバイクの免許の話しはしない方がよさそうだね。
和彦兄ちゃんのどんよりとした後ろ姿を見送った。

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