君に愛の唄を
あり得ない、あり得ない。
そう言い聞かせた私は蓮と教室に戻った。
「なになに?沢村と付き合うことになったの!?」
二人で教室に入って来たから紗英は勘違いをしていた。
「違う違う」
私は紗英との電話を切ったあとのことを全て話した。
紗英はコロコロ表情を変えながら私の話を聞いていた。
「本当に心菜の恋愛は面白いわ」
紗英はそう笑いながら言った。
悩んでる親友にアドバイスの一つや二つ…慰めの言葉とかないわけ?
「まぁ…心菜の話を聞くと沢村の印象もだんだん変わってきたしね。私は沢村と付き合うな、とは言わない」
確かに。
紗英、最初は蓮のことダサ男って言ってたもんね。
相変わらずボサボサ頭に眼鏡の蓮。
でも、眼鏡の裏にある瞳に何度吸い込まれそうになったか…
風に靡くボサボサの髪の毛を気にしないで遠くを見つめる蓮の姿が頭から離れない。