君に愛の唄を



「紗英、おはよ」


「あ、おはよー」



紗英の表情はいつになく笑顔だった。

だけど、紗英の視線は私の目をとらえてはいなかった。



「何でポケットに手入れてんの?」


「え、えっと…」



私はゆっくりと手をポケットから出した。

紗英は私の右手を見るなり笑い出した。



「隠さなくてもいいじゃん!」


「だって…恥ずかしいんだもん!」



私はすかさずポケットにまた手を入れた。


そういえば、蓮はどこにいるんだろう?



「紗英、ちょっと屋上行ってくる」


「あいよー。行ってら~」



きっと屋上にいるだろう…

そう思って私は屋上に走って向かった。


走りにくいから右手をポケットから出して走った。


屋上に通じる階段を二段飛ばしで登って行くと見たことある後ろ姿があった。



「れ…」



私は言いかけた言葉を飲み込んで進めていた足も止めた。


何で…


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