君に愛の唄を


どんどん目の前を涙が濁していく…



「ほら泣いてる…」


「…っ…な、泣いて…ない…!」



そう強がってみても溢れだすものは止まりやしない。

手で拭っても拭っても頬を伝う。



「泣き虫だなぁ」


「うるさ…」



──不意討ちだった。


いきなり、キスだなんてズルい…

ズルすぎる…


だけど、もう一度してほしいだなんて

欲張りなことを考えてしまう。



私より1m先を行く蓮。


たった1m先にいる蓮が果てしなく遠い。


気づいて……


足りないの。

全然、足りない。


愛しさが溢れだす。

もう、1cmも離れたくない。



「心菜、おいで…」



私は1mの距離を縮めていく…

ずっと、蓮の温もりに包まれていたい。



欲張りでいい。


ワガママでもいい。



それでもいいから蓮と一緒にいたい。
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