君に愛の唄を


血の気がサーッと引いていくのがわかる。

足がすくんで動けない。


どうして…

バレてるの……?


みんなの騒ぎ声がエコーがかかったように、遠くから聞こえて来る。


震える手がグーになる。


なぜか絶望感に襲われている。



「黙ってるってことは本当なんだ…」



テンションが高いみんなの声とは場違いの低い声が私の耳に届いた。


現実に引き戻される。


その声は私の聞き慣れた声で……紗英の声と認識するのにそんな時間はかからなかった。


紗英…


私が最も恐れていたことが起こったことは紗英の表情で一目瞭然。


怒ってる。


何か言わなきゃ、とわかっているのに声が言葉が出て来ない。
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