君に愛の唄を


私と紗英は場所を教室から屋上へと変えた。

紗英が「話、聞いてくれる?」と言ってきたから私は快く了承した。


さすがに教室じゃ話しづらい…


きっと今頃、教室ではHRが始まってるんだろうな。


さむっ…



「あのね…」


「うん」



紗英は空から私に視線を変え、ゆっくりと口を開いた。


そして紗英はお腹に手を当てた。



「みんなが言ってたこと、本当なんだ。彼氏との赤ちゃんできてた」



紗英はお腹を愛しそうな眼差しで見つめ、優しく包み込むように手でお腹をさすっていた。


その雰囲気はまるでお母さん。

温かいお母さん。



「私、産みたい!誰に反対されようが関係ない。この子は産むわ!」



私に訴える紗英のその目は、とても真っ直ぐで迷いがなかった。


覚悟はできてる、そう言わんばかりの気迫が伝わって来た。


私はゆっくり紗英に歩み寄った。
< 278 / 310 >

この作品をシェア

pagetop