君に愛の唄を

蓮…

私はすごく幸せだよ。


だって、こんなに温かいファンが私にはいてくれて…優しい言葉をくれる。


寂しくなんかない。


心地よい温かさがここにはあるんだ…────





「次が最後の曲になります」


『え───!!』


「ありがとうございます。…えと最後の曲はですね、私の大切な人に書いた曲で、とてもとても思い入れのある曲なんです」



そう。

君に、君のために書いた曲。


だから君に届くように歌うね?


君に届くといいな…



「では、聴いてください。君に愛の唄を」



『君に愛の唄を』のイントロが流れ出す。


私は感情を入れるために上を向いた。



え……────



一瞬だけ時が止まった。




「蓮……?」




幻なんかじゃなくて、そこに本物の蓮が二階の席にいたんだ。


来るなら言ってよ……


なんて、強がりながら嬉しいんだけどね。


──私は大きく息を吸った。
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