君に愛の唄を
帰りのHRが終わり、鞄に教科書とノートを詰め込んでいると紗英が歩み寄って来た。
「心菜!今日カラオケ行かない?」
「あ~、ごめん!」
私はごめんという気持ちで、顔の前で手を合わせてそう言った。
今日はどうしてもサラリーマンの歌詞を完成させたかったんだ。
曲は前から出来ていて、あと歌詞を考えるだけだったんだ。
「え~!心菜にココロ歌ってもらおうと思ってたのに~」
「本当にごめん!」
私は逃げるように、教室を出た。
紗英はよく私にココロの曲を歌わせる。
私の歌声がココロにそっくりだからって・・・私がココロなんだから当たり前なんだけど。
そのたびにバレそうで怖い。
でも、紗英にはいつか本当の事を言いたいと思っている。
紗英なら受け止めてくれるはず・・・
私は紗英を信じている。