君に愛の唄を
陸は私の膝に目線をやっていた。
何だろう?と私も膝に目線をやると、歌の歌詞を書いているノートがあった。
私は咄嗟にノートを閉じた。
見られた?
見られたよね?
「お前…」
「な、なに?」
お前…もしかしてココロなの?
とか言われちゃう!?
「お前…この前もここにいなかった?そのノート持って…」
陸の『この前』をいつの事なのか頭の中で一生懸命に探した結果、あのサラリーマンが頭に浮かんで来た。
まさかね・・・
「・・・何で陸が知ってるの?」
「俺、あのベンチに座ってたから…」
陸はそう言うと、サラリーマンが座っていたベンチを指さしていた。
俺、あのベンチに座ってたから──。
あのベンチに座っていたのはサラリーマンだったよね?
そして、陸もそのベンチに座って私を見ていた…
もしかして…
「あのサラリーマンが陸?」
そう考えるとつじつまが合う。
じゃあ、私はサラリーマンの陸の姿を見て、サラリーマンの歌を書いてたの?
それなら・・・
ちょっとだけ、
運命だって思っちゃってもいいかな?